中学校教員の労働実態
中学校教諭 遠藤利美様
本記録は、聴取者が聴取した概要の再現です。正確に聴取内容を記録したものではなく、文責はあくまでも東北希望の会にあります。
|
【うつ病体験】
10数年前、学校現場で管理職が大変な学校があった。教職員がたいへんで校長の防波堤にならなければと思い頑張っていた。
中学生も荒れていて、いろいろな事件が起きて、謝りに行ったり心底疲れ果てた。
学年の担任が病休を取って、自分が最後の砦となってと思っていた。
その年の生徒を進級させた翌年、車を運転していながら涙が泊まらなかった。
心臓がおかしいと思って、病院に行った。
子ども達の前でも声が震えたりおかしいと考えていた。
大友先生の裁判にも関わっていたから、大友さんもこうなって死んでいったのか、と思うこともあった。
子ども達が中1から中2のとき、病院にも行けずにいた。
大友さんのかさはらひでき先生という心療内科の話があたまをよぎった。
「うつ病はこころの風邪だ」という言葉。
当時は、あんなところに行ったら人間おしまいだと思われていたが、欧米ではカウンセリングしてもらったりする。心療内科の主治医がいる。ちょっと気になるとすぐ訪れるのが普通。
日本でも、気になったらすぐいった方がいいよと講演された。
長町の笠原クリニックに行ってみた。
半年くらいは授業もまともに出来なくなった。
階段が崩れ落ちるような無力感にさいなまれていた。
笠原クリニックではうつ病と診断され、薬を処方された。
帰りの車の中で、ゴクッと飲んだ。
飲んだ瞬間に、ポパイがほうれん草を食べたときのように、自信がみなぎっているような感覚になった。
その後、定期的に通って薬やカウンセリングで元に戻っていった。
組合の仕事、部活、授業などで自分の時間がなく、趣味は釣りだったが何年もやっていない。
田子中で仕事が早く終わったら、海に行って釣りをしている人を眺めたり土日は竿を持って自分の時間を取り戻すよう努めた。
そうしなければ、自分も自死の危険性があったと思っている。
大友さんは中学校、高野さんは小学校、大泉さんは中学校の教員だった。
裁判では勝ったが、彼らが帰ってくるわけではない。
大友さんは、バドミントンの事務局で大会が終わる前日、事務局内で自死。
荷下ろし症候群だったと思われる。
高野さんは研究主任で持ち帰り残業が続いたようだ。
大泉さんは、生徒指導、部活指導が大変だった。
部活後、夜連に出なくてはならず、長時間労働の末の自死だった。
誰からが犠牲にならなければ動かない体制があって、彼らの死があって動いてきた。
大友さんの裁判では、相手方の弁護士は「証拠があるんですか」と言い放った。
当時は教員の記録がなかったので、「記録がないということは働いていないということだ」
組合専従で働いていたが、みんなに働きかけた。
現在では、市も県も時間が記録されていないのはおかしいということを認め始めた。
仙台の在校時間集計
学校で働いている時間で正規労働時間を引いた時間を平均すると、
4月は72.9時間
5月は84.2時間
月80時間を超えると脳や心疾患が増えるが、中学校の平均でこうなっているということは誰でもそうなりうるということ。
これが明らかになることでこれは大変だということになった。
3人の犠牲の上でここまで来た。
各中学校ごとのデータ。ベスト10をあげると
年間平均で80時間を超える割合
1.中田中は59.1%
2.田子中52.6%
名前の挙がる学校は若い先生が多く,部活に熱心だったりするという要因もある。
田子中などはタイムカードがあるが、ない学校では過小評価で記録することもあるので完璧に正確だとは言えない。
教員の仕事の特徴
文科省:教職員のメンタルヘルス不調対策として出した資料
教員は、対人の援助職であるために終わりが見えにくく、目に見える成果を実感しづらい。燃え尽きてしまうことがある。
教員は魅力的だが、教材準備にしても終わりが見えない。
部活指導でも、スポ少がない学校では1から教えることになる。
保護者によっては、なんで勝てないんだ、県大会に行けないんだ、もっとやらせないんだといわれ、燃え尽きてがくっと折れてしまう先生がいることも頷ける。
自分の親の世話や子どもの世話をしたりしながらやる。
子どもが小さいときは、子どもを試合に連れて行って保護者に見てもらっていたこともある。
業務の特徴
多くの仕事を分担。研修会、研究会への出席、生徒指導の問題、保護者からの相談など多くのことに目を向けなければならない。
土日は休みだが必ずどちらかはやる。子ども達もそれを望む。
面倒見てあげたいという思いがあると頑張ってしまう。
組合の会合があると土日共につぶれる。
専門でない部活や荒れている生徒がいると本当に大変。
提出する書類が多すぎて、学校から帰れない。
生徒指導上の諸課題
不登校問題、地域連携、お祭りの見回り、町内清掃…なんでここまでというところまで要求される。
教職員の意識
個人で抱え込みやすい性質がある。自分で対応しなければならない。
教員は同僚に意見を言いにくい。
学校によってはプライドがあったりして意見がいいにくいときがある。
完璧にやって当たり前という意識。
子ども達がかわいくて、頑張ってしまって気がつくと自分のみが削られている。
他の職業との違いも意識する必要があると思われる。
【日本の教員の労働実態(OECD33カ国 国際調査 2014.6.25】
朝日新聞の記事
日本の中学校の教員は1週間の勤務時間は53.9時間で最長
日本の生徒の学力はトップレベルなのに、教員の「自信」は最低。
先生方は、もっと頑張らなければならないと思わされる。
青少年の意識調査では、学力があっても自分に対する自信・誇りは最低。
「もっと頑張れ」といわれ続けた結果ではないか。
点数が低くても、褒められて育つと自信が持て、意欲もわく。
大人が考えていかなければならない問題。
自信がないというのは「まだまだ」という厳しい世間の目の結果であろうという識者の意見。
中学校は部活動があるために大変。
高校は、部活に二人の顧問が就く。負担が中学校の半分。生徒が自主的に活動するから楽になる。
中学校の先生に宮城県教職員組合が行ったアンケート
8割の教職員が負担に感じることがあると回答。
みんながやめたいというわけではなく、中には部活動だけが楽しみの教員のいる。
勉強をがんばっても成果が出なくても、部活で意欲的になることもあるので、教育的な意味が高い。
負担の内訳
・休日拘束される。趣味ができない等。ストレスがたまる。土日のどちらか1日はボーッとしたい。
・専門でない部活を持たされるとつらい。女子バトミントンの経験。生徒から「おかしい」と指摘されたりする。そういう経験をしている先生も多いと思われる。
・指導できない自分が顧問で子ども達がかわいそうという思が負担になる。
・勤務時間内に仕事が出来ない。
・小さい子どもがいる先生は、家で仕事をすることになる。
・子育てに関わることが出来ない。
・保護者との関係。
部活への対策
・顧問の複数配置
・土日のどちらかは休業日にする。部によって、親の要求によってそうも出来ない場合もある。
部活に対する意見
・土日が拘束されて休みがない。大会が日曜だと土曜も部活になる。
・子育て世代なので、子どもを連れて練習試合に行かなくてはいけない。
・外部指導者にお願いして、自分は学校の仕事をしたい。
・専門の部活を指導したい。
・個別に学習指導してあげたい生徒がいてもできない。
・自分の子どもをほったらかしにせざるを得ない。
・選手選考など保護者と意見の食い違いが生じる。
|